高品質を求める特定顧客だけに評価される商品や企業は、量の獲得という課題を抱えます。技術力に依存しすぎて、高価格帯だけでビジネスを展開し、事業の規模が小さくまとまってしまうのです。
こうした企業は、海外展開でも苦戦します。ボトム・オブ・ピラミッドへのアプローチができず、商品開発も価格も市場に見合わないまま変革を実現することができないからです。「量」を確保するためにどんな戦略を取ることができるのでしょうか?
■高技術を維持/マーケティング強化
「高付加価値商材」を特定の顧客に売り続ける手法で、より広範囲での展開が必要なためマーケティング力を強化します。エリア毎の商品開発は、最小限に留めます。
■商品・販売手法のローカライズ
商品、販売手法等の完全なローカライズにより、顧客に合わせた価格帯の商品を投入します。商品開発のスピードとコスト削減が重要なテーマとなります。
どちらの道を選ぶべきか?
高技術を維持する道と、ローカライズを進める道。どちらが正しいということではありません。自社の強みと進出先の市場の状況によって、選ぶべき戦略は変わります。
ボトム・オブ・ピラミッドとは、所得階層の底辺に位置する多くの人々を指す言葉です。一人ひとりの購買力は小さくても、人数が多いため市場全体としては大きな規模になりえます。この市場で求められるのは、多くの場合、高機能よりも手に入れやすい価格と使いやすさです。
判断の手がかりは、自社の技術が現地の顧客にとってどれほどの価値を持つかです。価格が高くても選ばれる理由があるなら、高付加価値を守りながら販路を広げる道があります。現地の顧客が求めているのが「必要十分な品質を手の届く価格で」ということであれば、技術へのこだわりはむしろ足かせになります。自社が得意なことと、市場が求めていることを冷静に切り分けるべきです。
ローカライズを選んだ企業がつまずきやすいのは、国内で培った品質基準や意思決定の進め方をそのまま持ち込んでしまうことです。国内向けの仕様を少し削っただけの商品では、価格も機能も現地の期待に合いません。
開発や価格の判断を本社が握り続けることも問題です。現地の変化に対応するスピードが落ちるからです。商品開発のスピードとコスト削減をテーマに掲げるのであれば、現地の担当者にある程度の裁量を持たせる必要があります。現地の顧客の声を最も早くつかめるのは、現地で販売に携わる人たちなのです。
「量」を売るための営業へ
どちらの道を選んでも、「量」を確保するためには売り方を変えなければなりません。特定の顧客との深い関係に頼った営業は、高付加価値商材を売るには強みになります。しかし、多くの顧客に広く届けるには限界があります。
高技術を維持する道では、商品の価値をわかりやすく伝える仕組みが課題です。技術者や一部の営業担当者の頭の中にある知識を、誰でも説明できる形に整理しておく必要があります。ローカライズの道では、現地の販売代理店やパートナーと組み、少ない手間で多くの顧客に届ける売り方が必要になります。
見落とされがちなのが評価の基準です。高額な案件を少数獲得する営業を評価してきた組織が、小口の取引を数多く積み上げる方向へ舵を切るなら、目標や評価の仕組みもそれに合わせて変えるべきです。戦略だけを変えて評価が変わらなければ、現場の行動は変わりません。
自社の商品を「誰に、どの価格で、どう届けるのか」。事業の規模を広げられるかどうかは、この問いに改めて向き合えるかどうかにかかっているのです。





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