カーナープロダクトマンスリーコラム

ビジネスアーキテクトを専任で置けない会社は、DXをどう進めるか

「ビジネスアーキテクトが必要だということは、よく分かりました。ただ、うちにそんな人を置く余裕はありません」

DXのご相談をいただいた企業から、決まって返ってくる言葉です。おっしゃるとおりだと思います。事業の目的を定め、業務を設計し直し、関係部門をまとめて実行まで持っていく。この役割を一人の専任者に任せられる会社は、実際には多くありません。

では、専任を置けない会社はDXを諦めるしかないのか。そうではありません。

専任を置けないのは、会社の怠慢ではない

まず確認しておきたいのは、これが能力や意欲の問題ではないということです。構造の問題です。

ビジネスアーキテクトという役割は、事業の設計と、業務の設計と、実行の統率を一人が通しで担います。ところが通常の組織では、この三つは別々の部門に分かれています。一人が通しで経験する機会が、そもそも発生しません。

さらに、成果が出るまでに時間がかかり、しかも成果は関わった部門全体のものになります。個人の評価には結びつきにくい。手を挙げる動機が生まれにくい構造になっているのです。

ですから、社内に見当たらないのは当然のことです。問題は、いないことではなく、いないことを理由に何も始めないことにあります。

兼任でも進められる、三つの条件

専任でなくても、次の三つが揃えば取り組みは動きます。逆に、どれか一つでも欠けると、兼任者に負担が集中します。

一つ目は、決める権限を一緒に渡すことです。推進役を任せながら決定権は経営が握っている、という状態が最も動きません。部門間の調整で必ず止まります。どこまでを自分の判断で決めてよいのかを、着任の時点で明示してください。

二つ目は、時間を業務として確保することです。「今の仕事に加えて、余力でお願いしたい」という頼み方をすると、日常業務が必ず優先されます。構想を練る時間は、意識して空けなければ生まれません。既存業務のどれを外すのかを、同時に決める必要があります。

三つ目は、最初のテーマを小さく切ることです。全社の変革をいきなり任せてはいけません。一つの部門、一つの業務に絞り、成果が見える範囲から始める。小さく成功させた経験が、次のテーマを進めるための社内の信用になります。

この三つは、いずれも経営が決めることです。担当者本人にはどうにもできません。専任を置けない会社ほど、この三つを渡せているかどうかが結果を分けます。とくに人数の限られた組織では、一人が抱える業務の幅が広いぶん、時間の確保を曖昧にしたまま任せてしまいがちです。

外部を使うなら、丸投げではなく「一緒に担う」

外部の支援を使うという選択もあります。ただし、使い方を誤ると社内には何も残りません。

構想も設計も外部に任せ、できあがったものを受け取るだけであれば、支援が終わった時点で振り出しに戻ります。次のテーマが出てきたとき、また同じ費用を払うことになります。

そうならないためには、兼任の担当者を外部と組ませてください。外部が役割を担いながら、同時にその考え方と進め方を担当者に移していく。取り組みが一つ終わったとき、社内には成果と、次を自分たちで進められる人が残ります。

ビジネスアーキテクトは、資格ではありません。技術者である必要もありません。事業をどう伸ばすかを考え、それを業務の手順にまで落とし、関係者を動かす。この経験を一度通しで積んだ人は、二度目からは自分で進められるようになります。

人がいないことを、始めない理由にしない

DXが進まない理由として、人材不足が挙げられることがよくあります。ですが、待っていても人は現れません。取り組みの中でしか、この役割を担える人は育たないからです。

専任を置けないのであれば、兼任で始めればよい。権限と時間を渡し、テーマを小さく切り、必要なら外部と組む。その一巡目が、社内で最初のビジネスアーキテクトを生みます。

まずは、自社の現状を整理するところからお手伝いいたします。何から手をつけるべきか分からない段階でも構いません。

TRACKBACKS

COMMENTS

コメントは受け付けていません。