カーナープロダクトマンスリーコラム

【海外展開支援】深圳テック企業はコロナとどのように戦っているか

深圳は「国家社会と経済発展計画都市リスト」に名を連ねる5つの都市(ほか大連、青島、寧波,アモイ)の一つで、人口は1700万人を超え、経済特区(ほか珠海、アモイ、仙頭、海南)にも指定されています。自由な貿易を可能にし、外資系企業の参入と投資を歓迎しています。また最先端技術をいち早く導入し、それを都市全体でテストできるように指定されたような都市です。2021年上半期のGDPランキングは広州を抜いて本土で一位になりました。中国の主なIT企業が深圳にその本部や主な拠点を置いています。その企業にはWeChatで有名な腾讯Tencentや华为HUAWEI、アリババALICENTER、中兴ZTE、百度BAIDU、大疆DJIなどがあります。ではなぜ首都である北京にその役割を持たせることができなかったのでしょうか?その理由の一つとしてよく中国人自身が引用する言葉に、“山高皇帝遠”という言葉があります。それは“山のように辺鄙で遠すぎて皇帝が管理できない”という意味です。そして実際に自由や最先端技術を好む若い世代の人たちが本当に多く住んでいるのがここ深圳の特徴です。人口1700万の平均年齢は32.5歳という報告があり、最先端技術に都市全体で取り組むための良い土台があるといえます。

深圳のコロナ対策

では大都市である深圳は、コロナとどのように戦っているのでしょうか?中国全体のコロナの現状については、随時日本で報道される内容にほぼ間違いありません。しかし深圳におけるコロナ対策には、特長があります。それはデジタルと人の融合です。まず、深圳の全市民は、SNSアプリWeChatによって管理されています。本人が接種したワクチンや、行ったPCR検査結果に関する情報、過去どの都市や町に行ったかあるいは通ったかなど、すべてWeChatに記録されています。毎回WeChatを開いてその記録を入り口に立つ警備員に見せなければ地下鉄に乗ることもデパートに入り買い物をすることもできません。もう一つは人による体温検査です。主な施設の入口では必ず体温検査が行われ感染症の発見に力が注がれています。しかし、いったん自分が住んでいる地区で感染者が何人か出ると、政府主導で警戒レベルがすぐに引き上げられます。その地域の住人すべてにPCR検査を一週間に2-3回受けるように指示が出され、従わない場合は電話か自分の住んでいるマンションの管理員が来て検査を受けるように促されます。それでも拒むなら警察が家を訪ねに来るといった具体に徹底的です。でも、中国では、管理される=安全であるという認識が浸透しているのでほぼ全員従います。深圳の薬局で風邪薬を購入する場合も、WeChatを店員に見せることに加えて、顔認識システムのスキャンをして登録をする必要があります。次の日には自分の住んでいるマンションの管理員から携帯電話に連絡があり、「どの薬を買ったのか」「熱はあるか」といった質問に答えなくてはなりません。どれほどよく管理されているかを思い知らされます。

 ほかにも深圳のコロナ対策で目立つのが一党制政府の利点を生かした素早い対応です。例を挙げると、2022年1月初めに深圳の二つの地区(羅湖とロンガン)でコロナ感染者がわずか数人出たというニュースが流れました。そして、その日の午後にはすでにいくつかの地下鉄の駅を封鎖し、その地区の小中高の通学を停止し、感染者と濃厚接触をした人たちを携帯の位置追跡機能から割り出し、その濃厚接触者をその接触の程度により階級に分けて分類し、携帯のメールを通じていつどこで何日間に何度PCR検査を受けるのかまた何日間在宅で様子を見る必要があるかまで知らせます。そのメールには従わない人は地区を管理する人に報告されるともありました。ネットを駆使してコロナを封じ込める中国の政策は、若者が多い深圳では有効で、政府が打ち出す方針や政策とその実施の速さ、それに対して素直に従う市民などの要素が合わさって封じ込めに成功していると言えます。

深圳テック企業のコロナへの取り組み

深圳のテック企業にコロナはどんな影響を与え、彼らはコロナにどう立ち向かっているのでしょうか?コロナがどの職種にプラスの作用をし、どの職種にマイナスの作用をしたかはおそらく日本とあまり変わらないでしょう。代表的なプラスの例はデリバリーサービスですが、中国ではコロナ前からフードデリバリーのほかに、生鮮食品、日用品雑貨などのデリバリーサービス企業がすでに成長を見せていました。その企業も10社以上はあり競争が盛んです。日本のウーバーイーツにあたる美団が一般的になって10年以上経っています。深圳に住む若者は、コロナが始まる何年も前からすでにハードユーザーでした。デリバリー市場は既に確立されており、中小企業が入り込む隙はほとんどありません。そこで、深圳の中小企業が主に参入しているのは、アプリケーションの開発とメンテナンスです。中国の携帯で使用されるアプリケーションにはアンドロイドとIOSだけでなく、WeChatの中に組み込むより簡易的なアプリケーションあり、それらはより安価で容易に作成が可能です。一例を挙げると、例えばコロナ禍でパンを趣味で焼いている主婦が、自作したパンを大量に売りたいと思う場合、すぐにWeChatで売ることができます。アプリでメニューを選び、電子決算をし、デリバリーサービスもすぐに手配できます。商売が軌道に乗った段階で、初めて区役所に行き営業許可書を申請するという手順が可能なのです。このようにITを利用することで投資金額を抑えた商売を始めることができるので、アプリやシステム開発の市場は成長し続けています。またコロナ対策に不可欠なWeChatの身分証明、顔認識、ワクチン接種履歴やPCR検査の結果に関する情報などは、政府が民間の企業に依頼して作成また維持管理するもので、言うまでもなく深圳のテック企業に仕事を提供する場になっています。

アフターコロナ

深圳のテック企業が、アフターコロナに向けてどんな施策を練っているのかに興味があると思います。しかし、この点を考えるにあたり理解すべきなのは、中国において重視されるのは今稼げるお金をできるかぎりたくさん稼ぐことであるということです。それで、将来を見通し、今後何が必要とされ、市場に出回るのかを予想することよりもむしろ、今に注目します。中国のバイドゥがメタバースを始めたというニュースを日本で聞いたかもしれませんが、現地ではそれほど注目されているようには思えません。そうした価値観の深圳テック企業にとって、注目度が高く、著しい成長を見せているのがSaaSプラットホームです。医療衛生管理、ネット上の学びの場、金融業、ショート動画Tiktokやライブ配信、製造業のIT化などが必要としているのがSaaSだからです。この分野で深圳は、世界トップレベルのインフラを構築しています。私事ですが、先ほど政府が実施する無料のPCRに行ってきました。家から歩いて5分、少し並んで7分、検査は喉に綿棒を差し入れて30秒で完了、そして3時間後には検査結果WeChatに表示されました。コロナによって、深圳のテック企業は益々成長し技術、スピード、精度の面で更に大きく飛躍して行くことでしょう。 S-LOIS TECHNOLOGY

TRACKBACKS

COMMENTS

コメントは受け付けていません。