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比較購入が90%の時代選ばれる営業の秘訣

購入を決意するポイントは 価格より中身と信頼

比較購入が90%の時代選ばれる営業の秘訣

大手企業の購買部門では、一つの商品につき2、3社から仕入れることが常態化している。複数社から購入すれば、当然ながら価格・サービスの両面で競争が生じるため、かつてのようにルートを1社に絞るよりも有利な条件で仕入れることができる。不況が深まる中で、企業はこのメリットを重視しはじめたのだ。仕入れ先を決定する際も、従来以上に競争原理を働かせる企業が増えてきた。たとえば、これまでは付き合いの長い取引先1社を優先していたケースでも、競合する2、3社を加えて必ずそれぞれに見積もりを出させるようにしている、というようなことである。

これとは別に、個人の消費行動にも同じような傾向が見られるようになっている。以前なら薄型テレビなどの家電製品を買うときに、手近な家電量販店へ行ってそこに並んでいる商品のうちから適当なものを選んでいた人が、いまは別のチェーン店へも足を運び、価格などを比較してから決めるようになった。以上はすべて、2008年秋からの景気悪化にともない顕著に見られるようになった傾向である。

私たちカーナープロダクトは、市場にこのような環境変化が起きていることを確かめるため、法人300社および個人300人を対象にアンケート調査を行った(09年3月実施)。その結果、予想していた以上に「相見積もり」や「競合数社の比較」を重視する企業・個人が増えていることが明らかになったのである。これはいったい何を意味するのか。そして、その状況に対し営業マンはどのように対処すべきなのか……。アンケート結果をもとに、顧客企業を今後どのように攻略したらいいかを考えていきたい。

今回は法人300社、個人300人に対して同じ質問を投げかけた。最初の質問は「購入時に複数の企業を比較検討しますか」である。法人からの回答は次のようなものだ。「比較検討は必須」と答えた会社は300社中212社、70.7%にのぼった。さらに「ほとんどの場合、比較検討する」が71社、23.6%。つまり9割以上の会社が日常的に比較検討していると答えたのだ。一方、個人からの回答は「比較検討は必須」が300人中133人、44.3%だった。「ほとんどの場合、比較検討する」は、114人で38.0%。合わせると8割超の人が比較検討を行っていた。法人に比べれば比率が低いものの、消費者の多くはすでに比較検討する買い方を実践していることが判明したのである。

注目したいのはその先だ。「比較検討したのち、購入先を選ぶポイントはどこですか」という質問には、法人・個人とも同じ項目を挙げる回答者が多かった。順番は法人・個人とも同じなので以下にまとめて記そう。1位になったのは「商品やサービスの品質・機能、提案の内容」である。多くの企業・消費者は、中身によって選んでいるということだ。
2位は「企業の信頼と信用」。そして3位になってはじめて「価格」が出てくる。これは導入時のコストとランニングコストを合わせたものだ。

「比較検討する」というときにイメージしやすいのは価格だが、実際には、企業や消費者は価格以上に中身や信用が大事だと考えている。このことはたいへん重要である。今回の調査によれば、9割以上の会社が購買時にコンペを実施している。営業マンにとっては、新規開拓のチャンスが広がったとみることもできるだろう。だが、その際に価格だけで勝負をしかけようとしても、必ずしも成功しないということを調査結果は示している。あえていえば「見積書を出す以前に勝負はついている」のだ。

「提案内容と信用から仕入れ先はほぼ決定した。しかし、一層の値引きやサービス向上を期待できるので、競合他社にも声をかけ、形だけでもコンペを実施したい」発注元の本音はこんなところだろう。企業が価格を最優先しないのは、次のような事情があるからだ。この時期、いくら不況だといっても大企業の多くは資金繰りに窮しているわけではない。出せる金がないのではなく、出したくないのだ。別の言い方をすれば、品質と価格を十分に比較検討したうえで、コストパフォーマンスに優れたものを買いたいと考えている。そこには「安いだけ」の商品が割り込む余地はない、ということがおわかりだろう。

競合営業マンの中から 「相談相手」に選んでもらえるか

どのようにしたら、この困難なコンペに勝ち残ることができるだろうか。
私たちは「競合を意識したアプローチをすることで突破口が開けるのではないか」という仮説を立てた。それはこういうことだ。
見積書を依頼する段階では、どのようなスペックの商品やサービスを購入したいかを顧客側はすでに決定済みだ。売り込む側は、それに沿った提案をするしかない。提案内容が同じなら、結局、差別化のポイントは価格だけ、ということにならざるをえない。だが、そのときに思い切った低価格を提示しても仕事がとれるとは限らないし、もしとれても、利益を削ったうえでの受注なら会社のためにならない。不毛な価格競争に陥らないためには、そこに至る前にまったく別方面からアプローチすることが必要だろう。

そこで注目したいのが、「顧客は何をもとにスペックを決定するのか」ということだ。その道に通じたよほどのプロでもない限り、購買担当者といえども、専門的な判断を求められるスペック決定を自分ひとりでやることはない。必ず誰かに相談する。その「誰か」は多くの場合、最も親密な営業マンだ。日本市場ではハイレベルの商品・サービスを提供する世界的企業がしのぎを削っている。その中で「他社には絶対真似できない特別な機能」「切り札的なプラン」を打ち出そうとしても不可能に近い。つまり最終段階での一発逆転は難しい。そうである以上、事前に顧客からの「相談」をもちかけられる企業(営業マン)が非常に有利であるのは間違いない。

相談相手になれれば、スペックだけではなく、導入時期やおおよその費用についても顧客と情報を共有することになる。そのためコンペ以前に受注を半ば確実にすることができる。いまの時代、営業マンが目指すべきなのは、競合をかきわけて「顧客の相談相手になる」ということなのだ。そのために必要なのが、競合の動きを知ることである。たとえばこういうことだ。景気の冷え込みを受けて「月1回のアプローチを月2回に増やしてお客様との関係を強化しよう!」と営業マンに発破をかける会社があるが、これはナンセンスだ。なぜなら、競合の営業マンが半年に1回しか顔を出していなければ、月1回でも顧客にとっては十分に価値がある。となると、訪問回数を増やす代わりに提案内容を工夫するといった対応をすればいい。

有効な対策を打つには、競合によるアプローチの頻度や提案の切り口、提供している情報の質と量といった情報が必要になる。それを踏まえて、顧客にとっての自社や自分の位置づけを知るのである。

競合情報を顧客から 引き出す話術

競合の情報は顧客から得るしかない。最近はコンプライアンスの縛りが厳しいので、以前ほどはフランクに教えてくれない傾向がある。が、相手も人間である。よい感情を抱いている相手には情報を出してくる。いきなり、「他社の担当者からは何回くらい訪問がありますか」と聞いても身構えられるだけだ。まずは、「お忙しいですか」で始める。するとこんな会話が続く。「ええ、まぁ」→「私は週に1回来させていただいていますが、ご負担でしょうか」→「いえ、そんなことは」→「他社さんもこんなもんでしょうか」→「もうちょっと少ないかなぁ」といった具合だ。このようにして、他社の訪問回数が把握できる。

このとき、こちらが情報を欲しがっていることがばれないようにしたい。雑談の一つと思ってもらえると、慎重な態度が徐々に解けてくる。「あ、そういえば」「参考までに」などの前置きが効果的だ。このようにして聞き出そうとしても教えてもらえない営業マンは、すでに競合に競り負けていると思っていい。

そこから信頼関係を築いていき、相談されるポジション、言葉をかえれば相手にとって一番手の営業マンになることを考えなければならない。まず必要なのは、二番手である自社に声がかかるのはなぜなのか、つまり顧客が比較検討を行う動機は何なのかを探ることである。その理由は、大きく分けて次の二つに収斂する。「安く買いたいから」か「プロとしてのアドバイスがほしいから」。アドバイスがほしいのは、1社とだけ付き合っていると、丸め込まれてしまうのではないかという不安があるからだ。

どちらの理由かがわかれば、対策も見えやすくなる。前者の場合、価格の叩きあいになるのを避けるため、トータルで見たコスト削減や、自社の商品・サービスとは直接関係しない部分の業務改善や周辺情報を提供する。それによって徐々に相手の懐へ入り込んでいくのである。後者の場合は、何よりも「プロとしての専門知識がある」と思わせることだ。技術的な話を求める相手には技術の話を、学術的な話を好む人には研究動向を提供し、「プロだな」という認知を得るのである。

もちろん、現実には相談相手になることができず、価格競争でも有利とはいえない場合がある。実はそんなときにも活路を開くことはできる。具体的には、見積書を出すときに複数のプランを提示するのだ。たとえば(1)機能・価格ともに競合と同レベルの通常プラン、(2)機能を絞って価格も下げた低価格プラン、(3)メリットの大きい機能をプラスして価格も高めにした高価格プラン──の3パターンを提案する。複数プランを提示する目的は、顧客が設定した条件そのものを揺さぶることだ。条件設定をリセットすれば、もしかすると、顧客の要望によりフィットした解が出てくるかもしれない。強固に見えていた競合の食い込みが意外に浅く、「ほんとうはこんな提案を待っていたんだ」と、逆転受注につながることもあるのである。

 

 

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