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「開眼のきっかけ」トップ営業1000人分析

売れる営業マンには才能ではなく「きっかけ」があった

「開眼のきっかけ」トップ営業1000人分析

営業マンには「売れ出す」きっかけがある。
そのことが今回、1000人のトップセールスマンを対象にしたアンケート調査明らかになった。数多くのトップセールスと接してきた私の経験からいうと、どんなに優秀な人でも、入社後いきなり売り上げトップに立つということはありえない。同期入社組の成績は、最初の数カ月は横並びだが、1年ほど経つと、売れている人と売れていない人との差がはっきりしてくる、という傾向がある。それでは、その「差」は何をきっかけに生まれるのだろうか。

この部分が明らかになれば、営業部隊のマネジメントや営業マン育成の秘訣も見えてくるはずだ。今回のアンケートは、筆者が主宰する「トップセールスリンク」の会員1000人を対象に行った。

まず聞いたのは「入社何カ月後に単月売り上げでトップに立ったか」ということだ。「3カ月以内」が5.2%、「6カ月以内」が24.6%、「1年以内」が36.1%、「1年半以内」が20.6%、「2年以内」が9.7%、「2年以上」が3.8%だった。回答はみごとに「半年」から「1年半」に集中している。優れた営業マンには生まれつきのセンスや才能があって、それが1年半以内に開花するということだろうか?

ここで私は、1000人中「転職経験者」が75.5%もいるということに注目した。このうち「転職前はトップセールスではなかった」人は53.8%だった。つまり、転職組のうち半分は転職して初めて売れるようになったということだ。転職前は普通のセールスマンだった人が、転職して半年から1年半のうちにトップセールスに生まれ変わっていたのである。だとすると、「1年半」が意味するものとは、生まれつきのセンスや才能が開花するまでの期間ではなく、その期間に何らかの「売れ出すきっかけ」と出合ったということではないだろうか……。

そのことを証明するために、私はアンケート回答者のうち40人ほどに電話をかけ、追加調査を行った。すると「きっかけはありました」と答える人がほとんどだったのである。正確には「売れ出すきっかけ」というよりは「自分が変わるきっかけ」だ。「スイッチが入った」「意識が変わった」という言葉を使う人もいたが、営業のテクニックやセンスなどと直接関係のあることではなく、今までやっていたことに対して「これじゃよくないな」と反省するようになったきっかけ、自分の意識を変える出来事があって、その意識に基づいて行動した結果、半年後、1年後に成果が出た──という流れである。

一般に「営業マンはセンスだ」といわれる。実際にスキルやセンスに優れた営業マンばかりを採用し、そうした人たちの力量によって販売を維持している会社は少なくない。だが、今回の調査から読み取れるのは、センスやテクニック以前に当人の「意識」がきわめて大事だということだ。繰り返しになるが、調査対象はすべて現役のトップセールスである。彼らの話を聞いていると、そこには共通したストーリーがあることに気づかされる。おおむね次のようなものだ。

トップセールスになる前は、失敗や挫折を経験し苦労が絶えなかった。だが、あるきっかけから「これじゃいけない」「今のままじゃダメだ」と考えるようになり、そこで「問題を解決するためにどうすればいいか」を自分で考えたり学んだりするようになった。その結果、いろいろ試しているうちに販売成績も上がっていった。

一口にトップセールスといってもタイプはいろいろで、ノリがよくて話がうまい人もいれば、口下手なのに成績は抜群という人もいる。あるいは徹底してロジックで攻める人、態度が大きくてお客さんと対等の口をきく豪傑もいる。だが、どんなスタイルの営業マンにも共通しているのが、前述のようなストーリーだった。

「一件目」をどう売らせるかが決め手

それでは、どんな「きっかけ」で売れるようになったのか。

 

一番多かった回答は「上司、先輩の一言・サポート」。二番目は「実際に一件売ってみて、初めて気づいたり見えたりしたものがある」ということだ。一件目は自分の力だけでは売れないので、上司に同行してもらう。そこから「ああ、こうやって売ればいいんだ」と学び取り、それがベースになったというのである。三番目は「お客様の言葉」。お客さんから怒られたり褒められたりしたのをきっかけに何がよくて何が悪いのかを初めて自分の中で構築することができた、という。四番目は「本や雑誌の言葉」。五番目は「失敗や挫折への反発」だ。「なにくそっていう思いですね」。営業マンらしく何人もの人がこういう表現を使っている。たとえば同期に負けたとか、成績不振で怒られたとか、大きなミスをしてそれを挽回するために頑張った。そういうことがきっかけになったというのである。複数回答可でお願いしたが、主なものは以上五つに絞られる。

ここから分析できるのは次のようなことだ。

 

まず一つ目と二つ目は、マネジメントがいかに重要かということを示している。最近は組織のフラット化が流行のようになっているが、こと営業に関しては、依然として“引っ張ってくれる上司”が必要なのだ。といっても、やみくもに熱意で引っ張るのではなく、ある程度リードしつつ、部下のいいところを巧みに引き出すマネジメントである。一方、当人の胸中には「上司をいつか超えたい」という強い思いがある。上司を尊敬しているからこそ、上司の一言が心に突き刺さるのだ。

たとえば、こんな言葉である。
「背伸びしなくていい。今の自分で何ができるか考えなさい」
「いったん断られてから、いかに頑張るかが大切なんだ。断られてからが本番だぞ」
「飛び込みのときは、家族に見られて恥ずかしくないような営業をしろよ」
……などなど、聞いてみると意外に難しいことではなく、ふつうの言葉が多い。

つまり、ここで大事なことは「誰からいわれるか」であり、「何をいわれるか」は二の次なのだ。
尊敬していない相手から何をいわれても心には響かない。やはり「あんなふうになりたい」「10年後、自分はこういうふうになっていたらすごい」と思える相手でなければ意味がないのである。

先にも触れたように、最初の一件目を売るのは個人の力ではなく会社の力である。どうやって「一件目」を売らせるのか。それを体験させ学ばせるのも、マネジメントの力である。

これは「とにかく飛び込みをしてこい!」というような意味の“体験”ではない。個人任せの属人的営業は完全に時代遅れだ。つまり、飛び込みやテレアポによって数を稼いで売らせるという方法では、ぜんぜん能力がなくてもタイミングがよければ売れることがある。すると、経験が生きないのですぐにまた売れなくなる。逆に、タイミングが合わない場合は、潜在的に力があってもそれを発揮できずに、「売れない営業マン」のレッテルを貼られてしまうこともある。

したがって、会社が組織的な売り方をしているということが大前提になるが、そこのある一部分を担当させる。あるいは契約が取れたあとや、取れるか取れないかくらいのお客さんを担当させてフォローをずっとやらせる。つまり組織営業における“結果”を見せるということが大事なのである。上司はよく「自分で考えて工夫しろ」という。しかし結果を見せずに「工夫しろ」では、できるはずがない。だから、まず結果を見せて、これを得るための工夫なのだということを最初に体験させる。そうすることで、「こうやってみよう、ああやってみよう」とアイデアが生まれてくるのである。

一番になりたい営業マンは意外に少ない

「きっかけ」の三番目と四番目は、お客さんや本・雑誌からの言葉である。上司の言葉と同じで、回答者があげている言葉はどちらかというと平凡なものが多い。たとえばお客さんに「ありがとう」といわれる。営業マンによっては、そのときに何も感じない人もいるが、これをきっかけに仕事への取り組み方を変えてトップセールスに駆け上がる人もいる。では何が違うのだろうか。結局、「自分ももっと売れるようになりたい」と念じている営業マンでなければ感じることはできないのだ。

こう述べると当たり前のようだが、営業の現場では「売りたい」と思っている人は意外なほど少ない。もちろんノルマが達成できるくらいは売りたいと思っているが、「一番になりたい」「断トツの成績をあげたい」と念じているような人は、ほとんどいないのである。最近は、一番になることよりも趣味のほうが大事だと公言する営業マンも少なくない。そういう人たちを「一番になりたい」と思うように開眼させていく。そのことが何よりも大切だといっていい。

これは私自身がコンサルティングを手がけるときの大きなテーマなのだが、実は「お金」のインセンティブはまったく効果がない。100万円くらい出すなら話は別だが、達成したら数万円というレベルのインセンティブは、ほとんど効果がない。

若い営業マンは、意外に頭がよくて冷めている。極端にいうと「売ったらインセンティブくれるなんて当たり前でしょ」という思いがある。だから、お金以外のインセンティブによって「売りたい!」と思うように仕向けないとダメなのである。

たとえば「売れたら好きな時間に帰っていい」ということも、大きなインセンティブになりうる。さて、最後に五番目(失敗や挫折への反発)である。

この回答を聞いて私が実感したのは「失敗や挫折のときに営業マンを切り捨てない組織は強い」ということだ。現実には売れない営業マンをどんどん捨てていく会社もあるが、結局は、ある程度挫折した人を拾っていけるような組織のほうが強いのである。

 

 

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